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Birth Vol.03

退屈な日々をソース作る事で逃れるハイカ。
いつしかソースが彼にとっての個性であるかのようにコミュニケーションの媒体として使われてゆく。 端末を通した世界では誰もが表現次第でつながってひろがる。

自分の投じたソースで周りがどんどん繋がってゆく感覚にハイカはなにを思うのだろうか。 ある日いつものように父親の部屋から拝借した素材にあるひとつの興味をいだいて探るなかで知ったことが後の彼に何を与えるのか。



Billy Noise(ビリー・ノイズ)
楽器とは言えない物を音源とし、楽曲を構成していくノイズミュージック。 そのカテゴリでノイズロックのレイヴカルチャーとして語られることの多いアーティスト。

活動期間は5年にも満たないものであったが、彼の集大成ともいわれる「We make great ideas become great experiences」は旋律を完全に無視した独特な音響作曲法により構成され、工業製品や電子音はほとんど使わず、雑踏音、心音、血流音や唇を重ねたような音などで表現された。

その手法は多くのファンを魅了するとともに新たな音楽市場を打ち立てた。
音楽の快楽性を追求しているのが大きな特徴だが、麻薬性があるとし、一部では危険視する意見もあった。 <<音楽評論家 椎堂オサム>>



共通点があった。
親父の部屋から拝借した音声や映像はほとんどが俺の親父が聴いていたものであるから、ジャンルが似通ったものであっても不思議はないと思っていたが「ソース」を作るうちにどれも同じような構造をしている。

しかし、ここ最近俺の作ったソースの話題はネットで予想を遥かに上回る勢いで「つながり」をつづけ一部の音楽マニアからも支持を受けている。 ソースがクールだと。


おいおいおい、お前らの期待はしかと受け止めたぜ、なんてしびれたが後でそれら素材にある共通点があることに気付いた。



メタルフレーバーズ、ウォーキンヴォイド、ジム・フライ、クワイエットフォルダーなど挙げればかなりのグループやアーティストがリストできるだろう。 こいつらは全員「ノーラ」という女性シンガーとなんらかの形で関係していた。

もちろんビリー・ノイズともだ。
知らなかった。 調べてみるとジャンルは違うけれど、そのすべてがビリー・ノイズによるプロデュースだったのだ。


俺は興味がでてきたので素材としてではなくそれらの音楽を聴いてみる事にした。
今時流行の音楽とはさすがに違うため、しばらく慣れない感覚にいまいち楽しくなかったが、いつのまにかはまってしまった。



ハンディプレーヤーに大量に詰め込み通学やソースを作っている時もヘッドフォンを通して聴くようになった。 なんというか、オンラインショップで彼の手がけたアーティストの音源をかたっぱしから購入するようになり、ネットではいままでまったくつながらなかった音楽方面に趣味を持つ友達がたくさんできた。


「根岸、最近こねえな」

「ああ、忙しくてな」

「古川がうるせーんだよ、どうにかしろよ」

「ははは、放置しとけって。 あいつ金もってないからいらね」

「お前も有名になったもんなあ、このまま行くとアーティストとかになるんじゃね?」

「なれねーよ、著作権無視のソース屋だぜ」

「いやいや、クラブなんてきょうび流行んねーけど昔はDJがデビューとかしてたらしいし、お前のソースけっこう売れんじゃん、そのうちTVで昔ソース屋でしたとか言ってでてたりしてよ、俺鳥肌たってんの」

「ねーよ、しかもTVとかダサ。 今時誰もみねーし」

「だなー、じゃあ俺いくわ。 今日あがるんだろ? 待ってるぜ」



待ってるか。

俺はこの頃学校へは行かず、ずっと部屋でソースを作っている。
金がほしかった。 今までは暇つぶしでソースを公開していたが今はソースを売る事で音楽や映像を手に入れていた。

母親とは大げんかをしたが、今は顔さえ合わせない。
退屈な時間が毎日毎日つづき、嫌気がさしていたのに今では時間が全く足りない。


それもそのはずでコロニー側にあるサーバーにアクセスして大量のデータをダウンロードするのだから転送料金が割り増しだ。 ったくなんて世の中だ。

最初のうちは彼らの音楽をむさぼるように買いあさっていたが、そのうち「ノーラ」の存在が俺の中で必要不可欠な物になっていった。 素材のため、なんて思ってたがお気に入りのアーティストになっていた。


過去の産物だとは分かっていたが、どんな人なんだろうと気になり調べた。
しかし、楽曲以外はほとんど存在せず、後にコロニーに移住したことが分かった。


コロニーでも音楽活動は続けたらしいが、2年前にメディアに姿を現し一躍話題となるが1年足らずの活動をもって終了していた。

俺が彼女の姿を観たのはコロニー経由で配信されたロックフェスタの一部の映像だった。 といっても誰かが動画共有サイトにアップロードしたもので画質もあったものではなかったが、彼女はきれいだった。

クオーターであることはすぐに分かったが、日本人の少女であるという事に驚いた。 これっていつ頃の映像だろう。


ライダースーツのようなコスチームのバンドマンをバックに数人の女性にまじりノーラはそこにいた。
以前みつけた宇宙コロニーを特集したムックに移住した顔ぶれとして横顔があったのですぐに彼女だと分かった。



それからはコロニー経由で彼女の関連するものを探す日々がつづいた。
ある日、インタビューを見付ける。 コロニーチャンネルのTVで流されたものを廃れたTV局のサーバーに侵入して見付ける事ができた。


ーーーノーラさんはどうして活動地点をこちらにうつしたんですか。

 はい、歌をうたいたいとデビューして3年間地球で活動しましたが、アジア圏という枠を越えれない壁と言ったら大きく出過ぎかな笑、私みたいな女の子だけじゃ無理なので映画を作るみたいに伝えたい物を分かり易くするためにたくさんの方の力をお借りしてきたんですが、もっとたくさんの人に聴いてもらえたらと。



ーーーそれは「ノーラ」としてのジレンマ?

 そうですね、コロニーはこれからの新しい土地ですがオリエンタルな人たちが多いのでこちらで音楽の文化が作れれば、それはきっとコロニーから地球へ発信されるブームとして受け入れられるんじゃないかなと思ったんです。



ーーー文化ということは国の違いによる音楽性の違いのことですね。

 はい笑、でも日本人は英語でも聴きますよね。
アメリカなどの文化がそれだけ浸透してるからだとは分かるんですが、リズムだけでみると世界的には微妙に違うかもしれませんが、音楽が好きな人たちにはあまり壁はないように思うんです。



ーーーということはオリエンタルな文化の中で新しい音楽を作るということですか。

 そう思ってるだけでなにも変わらないかもしれませんが、、、志として笑
ここで過ごす事で私がオリエンタルに染まれたらそんな音楽が生まれるかなあと、表現力がまだぜんぜんないのでこれからたくさんの体験を通してがんばります。




この時、彼女は俺と同じ年だった。
17歳の少女になにがあればこんなにしっかりした事が言えるんだろう。 正直驚きだった。

地球ではライブでのソロはあったもののリリースされる楽曲ではコーラスや「楽器」としての一部だった彼女がコロニーでシンガーとして唄っていた。

代わるがわる複数の女性シンガーと紡がれるように唄う楽曲もそのうち彼女の声が分かるようになるのにそう、時間はかからなかった。




「ハイカの新しいソースいいよね」

「え、どれ? XTRY001394?」

「ちがうちがう、昨日配信されたemancipation #04だよ」

「うそー! 昨日? どこでどこで!?」

「はいはい、あわてる乞食はもらいが少ないっつてね」

「もー誰が乞食よ、アドレス送ってよ」

「わかった。 あたしもアンテナはってたんだけど最近ヤバいからみつけにくいんだよねー」

「だよねー」

「月って子がさ、教えてくれたの」

「えー誰それー」



To Be Continued

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